戦地での死と霊
どんな伝承か
復員後、気になっていた靖国神社へ参拝に出かけた。境内は木が切り倒され掃除も行き届かず、拝殿で目をつむり合掌しても、眠っている多くの友人たちの面影を一つ一つ思い出すことはできなかった。参拝を終え市ヶ谷から省線電車に乗ると、急にさみしさがこみ上げ、サイパンで死んだ佐々木、クェゼリンで死んだ寺田、航空母艦で死んだ貝塚や中林ら、死んでいった人々のことを次々に思い出した。霊というものは静かなものだと思った、幾十万の霊が嵐も起こさず、ただ静かに眠っているのだと。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ)
『私は幽霊を見た――現代怪談実話傑作選』は、東雅夫が編んだ怪談実話のアンソロジーで、メディアファクトリーのMF文庫ダ・ヴィンチの一冊である。平山蘆江・火野葦平・佐藤春夫・徳川夢声・遠藤周作・柴田錬三郎から石原慎太郎・新倉イワオ・稲川淳二まで、作家や文化人が自ら見聞きした幽霊や怪異を書いた文章を集める。目次には二十三篇と編者解説が並び、水木しげる・山田野理夫・桝井寿郎の座談「怪談詮議」や中岡俊哉「イタコの謎を追う」の抄録も含む。