獄中で楽観を貫いた磯部浅一の手記
どんな伝承か
二・二六事件で処刑された磯部浅一の獄中手記の一節が引かれている。同志が皆早死を覚悟するなか磯部だけが楽観していたため、栗原中尉らから、あなたに会うと死なない気がすると冷やかされたと記す。この手記は昭和十一年三月中旬、仙台第二師団に勤務していた花渕栄吉が、裁判の増援看守として東京陸軍衛戍刑務所へ送られた際に手に入れたものらしい。三島由紀夫はこの遺稿を、最後まで希望に満ちて筋が通っており、それこそ実践家の資格だと評し、天皇と一体化した磯部は自ら神となったのだと結んでいる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路)
『日本の幽霊たち――怨念の系譜』は、阿部正路が書きおろした日本文学の幽霊論で、刊行は日貿出版社が手がけた。『竹取物語』『源氏物語』『平家物語』などの物語、『日本霊異記』から『遠野物語』『聴耳草紙』に至る説話、能と歌舞伎、さらに三遊亭円朝・泉鏡花・森鴎外・小泉八雲らの近代の作品に現れる幽霊をたどり、怨念の系譜として読み解く。第一章で幽霊の時・季節・姿・場・目的を論じ、終章で稲生屋敷の物怪や百鬼夜行など幽霊の周辺に及ぶ。