旋風を火事と見て駆けつけた消防ポンプ
どんな伝承か
三十日午後二時ごろ、折から道路を修理中であった市外渋谷町上通り一丁目の市電青山車庫前の市電線路に、突如旋風が巻き起こった。工事用の土砂や棒切れなどがものすごい勢いで巻き込まれ、およそ三十間ほども舞い上がったので、同所を通行中の女や子供たちは眼を覆い、悲鳴をあげて逃げ惑い、一時は大変な騒ぎであった。遠くから眺めると、まるで黒煙の柱が空高く立ち上っているように見えたので、「それ、火事だ」とばかり赤坂・麻布・四谷あたりの消防署から警鐘もすさまじく自動車ポンプが駆けつけた。ところが竜巻は五分間ばかりで消え失せ、火事が迷子になって煙の影さえ見えず、面食らったという喜劇まで演じられた。
原典より
三十日午後二時ごろ、折から道路を修理中であった市外渋谷町上通り一丁目の、市電青山車庫前の市電線路に、突如旋風が巻き起り、…—— 日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。