市ヶ谷総監室での三島の自裁
どんな伝承か
著者は、昭和四十五年十一月二十五日に市ヶ谷の自衛隊総監室で行われた三島由紀夫の自裁を、武士道の古式にのっとった憂国の死として捉える。切腹し、介錯を受け、介錯した若い信頼する青年が後を追ったその一件は、事件というより人間劇の見事な様式化ですらあったという。三島は二・二六事件で処刑された磯部浅一の獄中手記に強く惹かれ、無意識と意識のあいだを往復しながら三十年、その事件と共にあったと書いていた。著者は、三島の魂が帰る場所は自衛隊ではなく、殺された青年将校たちの怨念の中だろうと結ぶ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路)
『日本の幽霊たち――怨念の系譜』は、阿部正路が書きおろした日本文学の幽霊論で、刊行は日貿出版社が手がけた。『竹取物語』『源氏物語』『平家物語』などの物語、『日本霊異記』から『遠野物語』『聴耳草紙』に至る説話、能と歌舞伎、さらに三遊亭円朝・泉鏡花・森鴎外・小泉八雲らの近代の作品に現れる幽霊をたどり、怨念の系譜として読み解く。第一章で幽霊の時・季節・姿・場・目的を論じ、終章で稲生屋敷の物怪や百鬼夜行など幽霊の周辺に及ぶ。