朝倉山から大葬を見下ろした大笠の鬼
どんな伝承か
鬼と天狗は日本の妖怪の双璧とされ、人々の前に姿を見せ始めたのは奈良時代より少し前のことだという。『日本書紀』によれば、舒明天皇九年二月に大きな音を響かせて東から西へ流れた星を、僧旻は天狗だと判じた。また斉明天皇七年七月には、天皇の大葬のありさまを、大笠をかぶった鬼が朝倉山の上から見ていたと記される。もっともこの時代の鬼や天狗はまだ多彩な振る舞いを見せず、人と具体的に関わる話が増えるのは奈良時代に入ってからである。絵に描かれた鬼も平安期にはまだ角がなく人に近い姿で、室町末期になって大きく変わり多様になったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・1986年(昭和61年))
『暮しの中の妖怪たち』は、岩井宏實が昭和六十一年に著した妖怪の概説書である。鬼・天狗・河童から山姥、産女、雪女、怪火、ザシキワラシ、化け猫、狐狸、幽霊まで、各地の伝承や古典・絵画に見える妖怪を一つずつ取り上げ、その姿と仕業を説く。第I章で個々の妖怪を紹介し、第II章で妖怪の性格、出現の空間と時、正体を論じ、巻末に著者が資料とした妖怪の本の一覧とあとがきを置く。