斬られた片腕を取り戻しに来た羅生門の鬼
どんな伝承か
渡辺綱は羅生門の鬼と渡り合い、その片腕を斬り落とした。ところが鬼は、腕が無くては不自由だからと、それを取り戻しに綱のもとへ再びやって来た。鬼が綱の前に現れたのはこの二度だけで、首尾よく腕を取り返してしまうと、それきり姿を見せなかったという。用が済めばあっさり去るこの鬼のように、江戸時代の執念深い幽霊とは違って、上代の日本の怪異はおおらかであったともいう。
原典より
渡辺綱のところに二度現れた羅生門の鬼にしても、斬り落とされた片腕がなくては不自由であるからとりもどしにきたまでで、首尾よくとりかえしたら、二度と現れていない。—— 怪談の科学――幻覚の心理を探る(中村希明・中村希明・精神医学) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の科学――幻覚の心理を探る(中村希明・中村希明・精神医学)
『怪談の科学――幻覚の心理を探る』は、中村希明が精神医学の立場から著した怪談の解説書である。新聞記事の幽霊騒ぎや体験談、民話の化かされ話、「浅茅ヶ宿」やハムレット、『四谷怪談』などの古今東西の怪談を取り上げ、その多くを高速道路催眠現象、感覚遮断、飢えや寒冷、睡眠や薬物による幻覚として説明する。生理的幻覚から精神変調時の幻覚までを四章で分析し、第五章「怪談の論理」で恐怖と幻覚の仕組みと日本の幽霊の特色を論じる。