一夜で北を向く鶴提地蔵
どんな伝承か
磯部町に鶴提地蔵と呼ばれる地蔵がある。昔、磯部の田んぼに鶴が渡ってきたころ、西山荘に隠居していた水戸の黄門さまがたびたび鷹狩りに訪れた。ある日、磯部宿の中ほどの延命地蔵堂の前で休んでいると、一羽の鶴が舞い降り、首を振って何かを訴えるようだった。仲間が鷹に殺されるのを見かねて命乞いに来たのだと察した黄門さまは、鶴の霊を慰め、土地の者に鶴を捕ることを固く禁じた。村人も千羽鶴を折って堂に下げ、鶴を供養した。のちに石仏を水戸へ移すと、南に向けて据えても一夜で北を向き、「磯部恋し」とつぶやくので、ひそかに磯部へ戻させたという。
原典より
ところが、いくら南向きに建てても、一夜のうちに必ず北向きになってしまい、「磯部恋し、磯部恋し」とつぶやき始めた。—— 常陸太田市史 民俗編――伝説(常陸太田市(編)・常陸太田市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
常陸太田市史 民俗編――伝説(常陸太田市(編)・常陸太田市史)
『常陸太田市史 民俗編――伝説』は、常陸太田市の市史民俗編のうち、第五章「ことばの伝承」の伝説と昔ばなしの部分である。第一節「伝説」は市域の伝説を自然的伝説・社会的伝説・歴史的人物伝説・信仰的伝説の四つに分け、国見山・赤沼・源太郎狐・十王坂・舞鶴城・義家・親鸞・徳川光圀・真弓山の天狗などの話を記す。社会的伝説には地名のいわれや塚・城跡の伝承が多く、第二節「昔ばなし」は冒頭の三話だけを収める。