孝行息子のくむ水が父にだけ酒になる泉
どんな伝承か
大和田の普光明寺から西浦を通り、清瀬の下宿へ向かう道は鎌倉みちと呼ばれていた。その道筋の大和田と下宿の境あたりに、木々に囲まれて清水の湧く泉があり、しみずさまと呼ばれていた。大和田の宿に近い二本杉という所に貧しい親子三人が暮らし、酒好きの父は酒がないと家族をどなりつけた。両親思いの息子は金もないまま徳利を持って出かけ、しみずさまの水を詰めて酒だと差し出すと、父はうまい酒だと喜んで飲み、酔って眠った。毎日続くので母が跡をつけて確かめたが、母や子が口にすればただの水で、父が飲むときだけ上等の酒になるのだった。ここから「親にきき酒、こはしみず」と言われ、泉はこわしみずと呼ばれるようになったという。
原典より
ただの水なのに父親は「こんなうまい酒はない」といいながら喜んでなんばいも飲みました。—— 新座市史 第4巻(民俗編)――伝説と昔話(新座市(編)・新座市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
新座市史 第4巻(民俗編)――伝説と昔話(新座市(編)・新座市史)
『新座市史 第4巻(民俗編)――伝説と昔話』は、新座市が編んだ市史の民俗編のうち、第四章「伝説と昔話」にあたる部分である。野火止の地名と在原業平の東下りを結ぶ伝説を『伊勢物語』や『新編武蔵風土記稿』などの記録とあわせてたどり、妙音沢・かしらなし・小僧ヶ淵・強清水などの場所をめぐる話、観音や地蔵の霊験・縁起の話を取り上げる。節ごとに解説を置き、『こども広報にいざ』などに載った再話や古老からの聞き書きを引く。