孝行の子に酒となった峠の強清水
どんな伝承か
甲駿を結ぶ中道往還が右左口から上九一色へ越える峠、その中腹に清らかな泉が湧いている。昔、九一色の孝行な若者が炭俵を背負って峠を越え、炭を売った金で甲府の町から竹筒に酒を求めては老父に飲ませていた。あるとき銭が足らず酒が買えなかったので、やむなくこの泉の水を竹筒に詰めて差し出すと、老父はこれは上等の諸白だと喜んで飲み干した。息子が試しに口にすればただの水で、神が孝行をめでて水を酒に変えたのだと語り伝えられ、以来この泉を強清水と呼ぶ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。