線路に現れた幻の対向列車と大狐
どんな伝承か
鉄道が通って間もない明治四十年ごろ、まだ単線だったころの話である。草加駅を出た下り列車が草加一丁目のN家の近くまで来ると、来るはずのない列車が正面から迫ってくる。衝突すると慌てた機関士は駅まで後退したが、上り列車はいつまでも着かず、駅長も来るはずがないという。発車すれば同じ場所でまた対向列車が現れる。それを幾度も繰り返した末、機関士は衝突覚悟で走らせた。すると大きな音がして止まり、降りてみると線路端に小牛ほどもある狐が死んでいた。N家の裏山に棲み、鶏を盗んでは村を荒らしていた古狐の仕業だったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
草加市史 民俗編――伝説(草加市(編)・草加市史)
『草加市史 民俗編――伝説』は、草加市が編んだ市史民俗編のうち、伝説の章である。柿木や青柳など市内各町の地名の由来、塚、毛長神社や弁才天などの神々、疣地蔵・火あぶり地蔵などの地蔵・薬師・観音、旅の僧、狐・むじな・狸・雷獣といった動物や妖怪の伝えを、『新編武蔵風土記稿』や縁起碑、土地の人からの聞き書きによって記す。地名起源から動物・妖怪まで九つの節に分け、聞き書きの話には町名と話者の頭文字・生年を添える。