死体が上るまで海が荒れる
どんな伝承か
石川県七尾の漁業者の間には、人が海へ落ちて死ぬと、その死体が上がるまで海が荒れ続けるという言い伝えがあった。これは全国各地の俗信・禁忌を集めた調査記録の一例で、梅干の種を海へ落とすと海が荒れるという言い伝えと並んで、七尾の漁師の間に伝わっていたものである。和歌山県宇久井の「水死人が上がらぬと海が騒ぐ」という類似の禁忌も同じ報告に記されており、海難死者への畏れが漁業社会に広く共有されていたことがうかがえる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の俗信 1――迷信の実態(迷信調査協議会(編)・日本の俗信・1949年(昭和24年))
『日本の俗信 1――迷信の実態』は、迷信調査協議会が編み、昭和二十四年に初版を出した迷信調査の報告書で、昭和五十四年に洞史社が復刻した。文部省が昭和二十一年に企画し、全国の小学校を通じて行った慣習状況調査をもとに、暦・日の吉凶・方角・妖怪・占い・民間療法・農漁業にまつわる迷信を統計と解説で扱う。第一章を古畑正秋・今野圓輔らの分担執筆とし、第二章に昭和二十四年度調査の手引、第三章に各地の言い習わし集、第四章に天文暦法の迷信の解明を置く。