石に花を咲かせた悪勢の霊
どんな伝承か
武尊山に悪勢という者がはびこり、通力を現して大雪を降らせたので、日本武尊は神火を揚げた。すると高山が原から烈しい神風が吹き、悪勢は通力を失ってことごとく焼け死んだ。悪勢が最も愛した夫人は土出まで逃れたが、難所を越えられずに大田村で息絶えた。今そこにある御前宮は、その夫人をまつったものだという。悪勢の息女は穂高山の麓で死に、付き添いの局も悲しみのあまり後を追った。その霊魂は宙をさまよって幻となり、石に花を咲かせたという。のちも悪霊が残って村里に疫病が絶えなかったので、花咲明神としてまつったと伝えられている。
原典より
花咲石 昔武尊山に悪勢がはびこり、通力を顕わして大雪を降らしたので、日本武尊神火を揚げた。—— 日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第4巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第4巻』は、日本の伝説を話型ごとに集成した叢書『日本伝説大系』の一冊である。茨城・栃木・群馬の三県に伝わる伝説を、男体・赤城の神争いや榛名湖の入水譚、平将門・源義家・親鸞・弘法大師などの事跡、河童・竜宮・長者・石・姥捨・九十九谷などの話型ごとに収める。各項は代表となる伝承地の話を掲げ、〔類話〕に各地の聞き書きを伝承者名や出典とともに並べ、〔文献〕に縁起・地誌などの古記録を抄出し、柳田・高木による話型名を添える。