木魂明神と伐杭の地名由来
どんな伝承か
都から下った吏が日向に永住して原坂と名乗り、幾代か後の主、忠左衛門に美しい一人娘ができた。娘が十八の春、毎夜眉目秀麗の貴公子が通ってくると乳母が明かし、母親は七籠の麻糸を用意して、娘に若者の袴の裾へ結びつけさせた。糸を手繰ると神社境内の大杉のところで終わり、正体は大杉の精とわかった。忠左衛門は怒って大杉を伐り倒し、娘を杉のくり舟に乗せ、増水した藁科川へ押し流した。盥で後を追った母親は川中の島で転覆して沈み、この島をこがれしの森と呼ぶ。娘の舟も覆ったが、杉は娘を抱き包んで島となり、舟山と名づけられた。大杉の跡には木魂明神が祭られ、字名も伐杭という。原坂家では以来、麻を植えなかったと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。