遠野町の侍の家へ通う怪しい男
どんな伝承か
近年、遠野町のある侍の家に美しい女房がいた。夫が江戸へ行って留守の間、どこからか見知らぬ美男が毎夜通って来た。女房がよくよく考えると、その男は戸障子を開け立てする様子がない。かねて聞いていたことがあったので、男に知られぬよう、その衣の裾に糸を通した縫針を突き刺しておいた。すると男はいつもの障子の穴から出て、庭先へ糸を引いて行き、庭の片隅のマダの木株の穴へ入っていた。糸をたどって、通い来る男の正体が知れたという話である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。