建長寺の住職に化けた老狢
どんな伝承か
昔、鎌倉に年経た狢が棲んでいた。ある時この狢が建長寺の住職を食い殺し、その法衣を着て住職に化けた。当時、京都へ行って位階を得て高僧になる風習があったので、化け僧も上洛しようと黒塗りの駕籠に乗り、各地の庄屋の家に泊まって行った。静岡市の本村下島の長田重樹の家に一泊し、翌日から西脇の萩原宗家に滞在した。この僧は入浴や食事の時に絶対に人を近づけず、常に屏風を巡らしていた。その後、安倍川で無数の犬に襲われ、駕籠を捨てて逃げたが、一匹の犬が猛烈に襲いかかって噛み殺し、老狢の正体が現れた。長田家には、その狢が書いたという掛軸がある。『静岡県安倍郡誌』に載る。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。