盥舟のお初と消えた燈明
どんな伝承か
熱海市初島の類話。昔、伊豆山に与七という若い大工がいた。島の仕事を頼まれて渡った際、お初という美しい娘と懇ろになる。仕事を終えて与七が伊豆山へ帰ると、お初は恋しさのあまり大盥を海に浮かべ、秋葉神社のお燈明をたよりに漕ぎ出して夜ごと通いつづけた。与七は百夜通えば嫁にすると言う。百夜目の晩、秋葉山のお燈明がふっと消え、お初の盥舟は波にのまれた。なきがらは伊豆山の浜へ打ち上げられ、一説には蛇体になって岸に上がったとも伝えられる。燈明が消えたわけは、二人の仲を妬んだほかの大工がわざと消したとも、お初を嫁にするのが嫌になった与七自身が消したともいう。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。