梅園の茶亭で見つけた三徳の小槌
どんな伝承か
明治四十五年の正月三日、牧野元次郎は百日咳の子を連れて熱海に滞在し、梅の咲く熱海の梅園を訪れた。園内の茶亭撫松庵で休んでいると、床の間に小さな箱があり、花札でも入っているのだろうと何気なく開けると小槌が入っていた。何とも味わいのある小槌で、箱書きには即非禅師が五葉の松を彫ったものとあった。主人に頼んで譲り受け、子が咳き込むたびにこれで撫でてやると楽になった。牧野は宝を振り出し、病を癒し、災いを除くとして、これを三徳の小槌と名付けて神棚に納めたという。
原典より
お正月のことでもあるし、多分花札でも入っているんだろうと思って、何んの気もなしにフト蓋を開けて見ましたところが、小槌が入っておったのでありました。—— 日本神異見聞伝(笠井鎮夫・1974年(昭和49年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本神異見聞伝(笠井鎮夫・1974年(昭和49年))
『日本神異見聞伝』は、笠井鎮夫が昭和四十九年に著した霊異の見聞記である。第一篇では、大正期に大本で鎮魂帰神を受けた著者が、霊媒による死者の招霊や狐霊・竜神の託宣、霊石の発掘などを研究会での語りの口調で伝える。第二篇では、慶応三年のええじゃないかのころ尾張・遠江・駿河・美濃・丹後などで起きたお札降りを、旧家の古文書や郷土史家の便り、著者の現地調査から記録している。