湯野権現の燈明と蛇体の女
どんな伝承か
昔、伊豆山の若い番匠が三里沖の初島に仕事に出かけたところ、島の美しい娘に思われ、妻にしてくれとせがまれた。男は困って、伊豆山まで百晩通い続けたらばと言って別れた。男が帰った夜から、雨でも風でも初島の女がやって来る。毎夜便船があるはずもないと気をつけると、女の来た跡が濡れていることがある。調べると、伊豆山の裏山の山腹に祀られた湯野権現に毎晩あがる燈明を目当てに泳いで来るのだった。六十日も七十日も続いて薄気味悪くなった男は、九十九夜目の大暴風の晩に権現の燈明を消しておいた。その夜、女は来なかった。翌朝、海辺には初島の女が打ち上げられて死んでおり、体中に鱗が生えた蛇体であったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。