川に飛びこみ蛇となった清姫と蛇の執念
どんな伝承か
蛇は骨を持たず地を這い続ける生き物として、古来より怨念の象徴とされてきた。安珍清姫の悲劇を描いた道成寺の縁起はその代表例で、安珍を追う清姫は川に飛び込むと同時に全身が蛇体と化す。川そのものが蛇体として観念され、瀧となって落ち、逆流して立ちのぼると龍になるとされた。埋葬された死者もまた蛇の姿になると伝えられ、脱皮を繰り返して成長し続ける蛇の執念深さは、月の満ち欠けとも結びつけて畏怖されてきたという。
原典より
蛇が水の精霊である以上、安珍を追う半蛇体の清姫が、川に飛びこむと同時に身体全体が蛇体になるのは当然で、実は、川そのものが蛇体として観念せられていたのだ。—— にっぽん妖怪の謎(阿部正路・阿部正路・妖怪学・1992年(平成4年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
にっぽん妖怪の謎(阿部正路・阿部正路・妖怪学・1992年(平成4年))
『にっぽん妖怪の謎』は、阿部正路が平成四年に著した日本の妖怪論である。神の零落した姿としての妖怪という見方から、記紀や『今昔物語集』『太平記』、西鶴や『耳袋』、鳥山石燕の画図、近代文学や漫画までを引き、鬼・天狗・河童・狐・蛇・鵼などの出現と変遷を論じる。五章に分け、魔女・妖精・吸血鬼など外国の妖怪を扱う十篇のコラムを挟み、あとがきでは秋田の将軍野に生まれ柳田国男・折口信夫の門流につながる著者の来歴を語る。