夜のねてこが池に投げ込まれた三巡査
どんな伝承か
西宮の川上にあるねてこが池では溺れ死ぬ者が絶えず、前の日に助けられた富山の薬売りまでが翌日には池で死んでいた。西宮警察署の署長は、住民を悩ます怪物の正体を突き止めよと命じ、腕の立つ若い巡査三人を選んで退治に向かわせた。三人は刀や拳銃を手に、月が西へ傾く夜、夙川堤の松原を抜けて池の堤へ上った。闇の中で大きな物音がして、老松を背に真っ黒な怪物が立ち上がる。斬りかかっても刀は岩や松の幹を打つばかりで、気づけば池一面に青畳が敷かれたように見えた。堤の上から高笑いが響いたかと思うと、三人は襟首をつかまれて池へ放り込まれ、ずぶ濡れで逃げ帰った。
原典より
「そりゃ出たつ」と三人は一斉に音する後方を振り向けば、黒白も分かぬ闇の中、老松を背にスックとばかり突つ立ち上がつた真黒の怪物。—— お化と幽霊 怪談揃ひ(大文館編輯部(編纂)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化と幽霊 怪談揃ひ(大文館編輯部(編纂))
『お化と幽霊 怪談揃ひ』は、播州を中心に摂津・淡路・大阪・神戸の怪異を集めた怪談集である。神戸のチャブ屋に残された下女の片足の靴、明石の坊主橋に出る按摩の怨霊、西瓜に浮かぶ女の顔、淡路洲本の白壁物語、西宮のねてこが池の怪などを、地名と人名を挙げて講談調で語る。三十余りの話を並べ、天保や明治九年の出来事とする話のほか、寄せられた原稿によるとことわる話も含む。