女の顔が浮かぶ西瓜と乞食婆
どんな伝承か
大阪の講釈師南陵が弟子の南洲を連れて明石の王西座に出ていた夏、宿で買った西瓜を割ると、黒い種が目鼻となって赤ら顔の女の顔が現れた。同じ宿の母娘の西瓜も同じで、翌日売りに来た若い西瓜売りが目の前で切っても、どれを割っても女の顔が出てきた。西瓜は明石に近い村の素封家が、家の前の空地に種も蒔かずに実ったものを若者に分けて売らせたものだった。主人が割るとふつうの西瓜なのに、若者に渡った分だけ女の顔になる。主人は前年の夏、空地の榎の下で病み倒れた播州三木生まれの乞食婆を世話し、そこで死んだ婆を葬ったことを思い出した。榎の下を掘ると婆の髑髏が出て、恩返しだろうと村の古老は語ったという。
原典より
思ひきや昨年の夏の榎の下であはれ最後を遂げた乞食婆の髑髏が出てきたので人々はアッとばかりに驚いた。—— お化と幽霊 怪談揃ひ(大文館編輯部(編纂)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化と幽霊 怪談揃ひ(大文館編輯部(編纂))
『お化と幽霊 怪談揃ひ』は、播州を中心に摂津・淡路・大阪・神戸の怪異を集めた怪談集である。神戸のチャブ屋に残された下女の片足の靴、明石の坊主橋に出る按摩の怨霊、西瓜に浮かぶ女の顔、淡路洲本の白壁物語、西宮のねてこが池の怪などを、地名と人名を挙げて講談調で語る。三十余りの話を並べ、天保や明治九年の出来事とする話のほか、寄せられた原稿によるとことわる話も含む。