柳の井に潜む大蝦蟇の退治
どんな伝承か
永禄年間、川辺郡稲野村の昆陽の大池のほとりに、周防の大内家に仕えた浪人結城千駒が住んでいた。そのころ界隈では、子どもをさらって食う怪物の噂が立っていた。ある夕方、千駒は身の丈一丈を超える大入道に三歳の子を奪われ、追った妻も全身紫色になって死んだ。一年後には残る五歳の子もさらわれた。仇を探し歩いた千駒は、子を食いながら城の石垣を飛び越えて消える大入道を見て、城主の摂津守村重に仕官した。城の東南の隅で柳の垂れる古井戸に小鳥が吸い込まれるのを見て、夜に現れた怪物を射ると、村重は井戸を掘らせて熱湯を注ぎ、這い出た巨大な蝦蟇を射殺させた。本懐を遂げた千駒は浪人に戻り、田を耕して生涯を終えたという。
原典より
流石の大蝦蟇も見る影なく四肢を踏ん延ばして息絶えて仕舞った。—— お化と幽霊 怪談揃ひ(大文館編輯部(編纂)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化と幽霊 怪談揃ひ(大文館編輯部(編纂))
『お化と幽霊 怪談揃ひ』は、播州を中心に摂津・淡路・大阪・神戸の怪異を集めた怪談集である。神戸のチャブ屋に残された下女の片足の靴、明石の坊主橋に出る按摩の怨霊、西瓜に浮かぶ女の顔、淡路洲本の白壁物語、西宮のねてこが池の怪などを、地名と人名を挙げて講談調で語る。三十余りの話を並べ、天保や明治九年の出来事とする話のほか、寄せられた原稿によるとことわる話も含む。