甲山に出る牛の頭の女
どんな伝承か
西宮の甲山には牛女の怪談がまつわる。怪談実話集『新耳袋』によれば、甲山へ植物採集に出た中学教師が、赤い着物を着て口から血をしたたらせる牛の頭の女を見た。甲山のそばにあった、半人半獣の妖怪を封じたと伝わる祠が空襲で焼けたとき、焼け跡で動物の死骸をむさぼる着物姿の牛女が目撃されたともいう。放送作家の中山市朗氏は、牛を殺す神事を村人がこわごわ見た記憶が噂となり牛女の姿になったのではないかと推し、神呪寺の寺史には、甲山が中世以来近在の農民の牛の放牧場だったことも記されている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪伝説奇聞(東雅夫・2005年(平成17年))
『妖怪伝説奇聞』は、東雅夫が二〇〇五年に学習研究社から刊行した妖怪伝承地の探訪記である。稲生物怪録の木槌、クダン、牛鬼、塵輪、ナメラスジ、八幡の藪知らず、鬼の骨、蛇骨、鍋島の怪猫、児啼爺などを追い、中国・四国・九州ほか各地の寺社や旧家を訪ねて遺物と伝承を確かめる。月刊誌「ムー」の連載「日本伝説紀行」の十二章を三つのカラーグラビアで区切り、巻末に草双紙『鍋島猫騒動』の復刻を添える。