鐘ごと僧を焼いた清姫の大蛇
どんな伝承か
『今昔物語』によると、熊野権現に参る老若二人の僧が牟婁郡で宿を借りた。家主の若い寡婦は美しい若僧に恋い焦がれ、夜中に寝床へ忍んで夫にしたいと迫った。僧は宿願の参詣の途中だと断り、帰りに必ず応えると約束して逃れたが、帰りは別の道を通った。欺かれたと知った女は寝屋に籠もって息絶え、三間ほどの毒蛇となって僧を追った。僧は道成寺に逃げ込み、寺の僧は鐘を下ろして若僧をその中に隠した。大蛇は寺門を破って鐘に巻きつき、尾で竜頭を叩き続け、血の涙を流して去った。鐘を起こすと若僧は灰になっていた。のちの縁起では僧は安珍、女は真砂の庄司の娘清姫とされ、日高川で蛇体となって追う筋が加わった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
講座日本風俗史別巻 妖異風俗((講座日本風俗史 別巻)・日本風俗史・民俗)
『講座日本風俗史別巻 妖異風俗』は、『講座日本風俗史』の別巻として、複数の執筆者が妖しく異様な風俗を論じた巻である。淫祠と性の祭礼、戦後の新興宗教、性にまつわる迷信、妖術・忍術・奇術、憑きものと特殊家系、心霊術と催眠術、異類との婚姻、性と怪異の関わりを、古典の随筆や各地の報告、事件の記録から取り上げる。九つの章に分け、終章「日本妖異風土記」では関東から九州・沖縄までの怪異譚を地方別・県別に掲げる。