煎り豆から芽が出た川北の黒豆
どんな伝承か
昔、川北に情け深い大臣が住んでいた。神詣りの帰りに旅に疲れた坊さんと出会い、家へ連れ帰った。川北は水の不便な土地で、その年はことに雨が降らず田植えができなかった。村人は「他所の者が入り込むと不幸が起こる」という言い伝えから、坊さんを泊めた大臣の家へ押しかけて乱暴を働いた。たまりかねた坊さんが詫びると、村人は煎った白豆を出して「この豆に芽を出せ」と言った。坊さんは二十一日の願をかけたのち、経を唱えながら煎り豆を一つずつ蒔いて旅立った。秋にはどの枝にも肥えたさやが実り、黒いつやつやした豆がとれた。村人は坊さんの徳を語り伝え、その黒豆を大切に育て続けたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第8巻』は、黄地百合子・酒向伸行・田中久夫が滋賀・京都・兵庫の三府県を分担して執筆し、福田晃がまとめた伝説集である。丹波の湖を神々が切り開いた国造りの話、神同士の争い、英雄や長者の盛衰、蛇と人の話、魚・鳥・石・塚・祠堂の由来などを、各地の口承や記載資料から集める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、高木敏雄・柳田国男の対応する話名を付す。