野根山の狼と鍛冶屋の婆の正体
どんな伝承か
室戸市佐喜浜に伝わる。野根山を越えていた飛脚が、装束森の山道で産気づいた女に出会い、狼を恐れて寝の木の杉に押し上げて出産させた。夜更け、狼の千匹連れが肩車で木の上の女に飛びかかるのを、飛脚は次々と斬り捨てた。狼たちは崎浜の鍛冶屋の婆を呼ぶと言って去り、やがて平鍋をかぶった大狼が現れた。飛脚が刀の峰で鍋を割って斬りつけると群れは逃げ去った。翌朝、崎浜の鍛冶屋を訪ねると、婆は昨夜転んで頭を打ち寝ているという。障子の破れからのぞき、こよりで耳をくすぐると動いたので畜生と見抜いて斬り殺した。亡骸は老いた狼になっており、床下には人や獣の骨が積まれていた。役場前の畑がその屋敷跡で、隅に狼を祀った祠がある。
原典より
<高木——「弥三郎婆」>昔、ある日のこと、一人のお飛脚が急ぎの御用で、野根山を越えて行きよった。—— 日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第12巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第12巻』は、四国四県(香川・愛媛・徳島・高知)の伝説を話型ごとに集めた伝説集成の一巻である。神々の争いや大人の足跡、弘法大師の彫り残しや麦の種、英雄の誕生、長者、人柱、蛇聟、狼の報恩、化猫退治、首切れ馬、夜泣石、地蔵の霊験などを、町村誌や地方の伝説集、昭和五十三年度立命館大学説話文学研究会の採集調査稿から採る。百三十九話に通し番号を付け、各話に伝承地と出典、高木・柳田の分類名を添え、県別の〔類話〕と〔文献〕を続ける。