月毛の駒と羽根田の井戸
どんな伝承か
百済国王の船が油津に漂到した。宮居を探して見まわすと北の山地に五色の雲が舞いおりたので、小姓二人を従えて山に入った。雲の下の岩屋で休んでいると田野の男達八人が話しかけたが、王が返事をしないので、蔦葛を振りながら身ぶりおかしく舞をまった。王は微笑し、男達は王を田野に案内して仮殿を建てて仕えた。王が百済で飼っていた鶴が飛んで来て仮殿を守護した。山へ入ったとき疲れて魂の抜けたようになった小姓に王が谷川の水を飲ませたので、この坂を小姓坂と呼ぶ。王が泊まった所を宿野、男達の舞をしゃらくり舞という。王は月毛の駒を愛したが、羽根田というところで駒は王を乗せたまま井戸にとびこんだ。村人は王を神として祭った。田野天建神社がそれで、今も月毛の駒を忌むという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。