銀杏の杖を遺した穂北の白蛇お浪
どんな伝承か
千三百年ばかり前、穂北郷を治めていた仁右衛門とさきの夫婦は子がなく、神に願をかけて女の子を授かった。お浪と名づけられた娘は郷一の美人に育ったが、毎朝その草履が濡れているようになった。ある夜あとをつけると、屋敷の南百メートルほどの池のほとりで姿が消え、一頭の白馬に変わった。問われたお浪は、姿を見られた以上ともには暮らせぬ、会いたければ霧島山の大池へ来よと言い残して消えた。夫婦が大池で呼ぶと、お浪は現れて大きな白蛇に変わり、銀杏の杖をついて帰るよう告げて沈んだ。杖は芽を吹いて大銀杏となり、家は栄えた。娘の墓は南向きに建てても、いつのまにか西を向いたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第14巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第14巻』は、熊本・宮崎・鹿児島の三県に伝わる伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。阿蘇の大鯰や海幸山幸など神話に連なる話から、為朝・景清・人丸姫の伝承、長者や河童・狐の話、池の主や大蜘蛛退治、狩人と犬の話までを収める。各項目は口承を重んじた例話を冒頭に据え、梗概にした類話と、『肥後国誌』など近世以後の史料を原文で引く文献を続け、全体を文化叙事伝説と自然説明伝説の部に分ける。