月蝕に戸を打ち鳴らし鬼を追う
どんな伝承か
昔の人は、月蝕があると、鬼がこの娑婆へ人間を食べに来ようとしているのだと言った。月が「自分を食べて、この娑婆の人間を生かしてください」と言って身代わりになっているのだという。それで食物などを作って外へ出し、拝む人たちがいた。語り手が幼いころは、七日雑炊を作って祖先などへ配ると、猪を射る人たちがあちこちで鉄砲(煙硝ばかり)をどんどん鳴らし、たくさんの人が戸を打ち鳴らした。ほとんどの人がそうしていたので、鬼というものが本当にいると思っていたという。老人たちは月蝕を見て拝んでいたそうである。
原典より
昔の人は、月蝕があるでしょう。—— 日本伝説大系 第15巻(山下欣一・遠藤庄治・福田晃(編集執筆)・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第15巻(山下欣一・遠藤庄治・福田晃(編集執筆)・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第15巻』は、山下欣一・遠藤庄治・福田晃が奄美・沖縄本島・沖縄先島の編集執筆を分担し、福田晃が全体をまとめた伝説集である。島々の口承伝説を、市町村の民話集や大学の口承文芸研究会の採集稿、近世の文献から集め、天地や人類の始まり、島建ての神、キジムナー、蛇婿、津波、御嶽や墓の由来などを収める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、類話は地域別に配列する。