遺老説伝が記す水納島の鷹
どんな伝承か
昔、日本の国の人が一人、宮古の水納島に漂流して住みつき、朝夕悲しみ憂えていた。ある日、この島に飛んで来た鷹を捕らえてみると、もとから飼っていた鷹で、翼に米の粉の袋が付いていた。日本人はこれを深く奇異とし、故郷の思いに感じて泣き叫んだ。そして指を一本噛んでその血を取り、硯と筆の二字を袋の上に書き、鷹を放って飛び去らせる。数日も経たないうちに鷹は硯と筆を帯びて飛んで来たが、途中で気力が尽き、海に落ちて石泊の浜へ漂い着いた。日本人はこれを見て鷹の落ち死んだことを深く惜しみ、この地に葬った。以後、毎年鷹が来ると必ず墓の上に群れ集まり、今の人はこれを見て心を動かさない者はないという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第15巻(山下欣一・遠藤庄治・福田晃(編集執筆)・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第15巻』は、山下欣一・遠藤庄治・福田晃が奄美・沖縄本島・沖縄先島の編集執筆を分担し、福田晃が全体をまとめた伝説集である。島々の口承伝説を、市町村の民話集や大学の口承文芸研究会の採集稿、近世の文献から集め、天地や人類の始まり、島建ての神、キジムナー、蛇婿、津波、御嶽や墓の由来などを収める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、類話は地域別に配列する。