洞前に忘れた刀が蛇に化けた話
どんな伝承か
薩摩の侍が沖縄から国元へ船で帰ろうとしたが、向かい風で二、三日から四、五日待っても風がまわらなかった。よい神様だと聞いて普天間権現に参り、追い風に変えてくださいと祈願した。洞窟に入る時、刀を差したまま神前に出てはいけないと思って手洗い水の所に刀を置き、中で拝んだ。出てくると風向きが変わっていたので、刀を差すのを忘れたまま馬を走らせ、那覇から船で帰ってしまった。忘れられた刀は人が見ると蛇になって逃げたりし、人が出入りしても気づかれずにあって、後日その侍が礼参りに来た時までちゃんとあったという。それからは、普天間権現は船旅に縁起のよい神として皆が拝むようになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第15巻(山下欣一・遠藤庄治・福田晃(編集執筆)・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第15巻』は、山下欣一・遠藤庄治・福田晃が奄美・沖縄本島・沖縄先島の編集執筆を分担し、福田晃が全体をまとめた伝説集である。島々の口承伝説を、市町村の民話集や大学の口承文芸研究会の採集稿、近世の文献から集め、天地や人類の始まり、島建ての神、キジムナー、蛇婿、津波、御嶽や墓の由来などを収める。第一部「文化叙事伝説」と第二部「自然説明伝説」に分け、各話を例話・類話・文献・参考の順に並べ、類話は地域別に配列する。