善人が向かえば澄む金鑽神社の鏡岩
どんな伝承か
神川町二ノ宮の金鑽神社の背後の山上に、鏡岩と呼ばれる巨大な岩石の摩肌がある。上下四メートル、左右九メートルほどの面は鏡のように滑らかでよく物を映し、国の特別天然記念物に指定されている。古くから諸書に記され、『本朝俗諺志』や『甲子夜話』は柿色で向かえば鏡のように人影が映ると述べ、『遊歴雑記』は顔の皺まで映ると伝える。『日本伝説』北武蔵の巻は、心の悪い者が向かうと面が曇り、善良な人が向かうと澄むという伝説が生まれたと記す。京都の不可測道人が漢詩に詠んだこともある。近年サクを設けた結果、岩肌にサビがついて曇り出したが、村でサビ取りをして再び光を取り戻したという。
原典より
高さ廿四五丈、巾三十丈ばかり。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。