姥捨の唐櫃と天明の石
どんな伝承か
所沢市の小手指地区、弁天池のほとりにある石を人々は天明の石と呼ぶ。昔は六十歳を過ぎた老人を唐櫃に入れて養ったという話があり、老人は松虫鐘を打ちながら念仏を唱え、その鐘の音が聞こえている間はむすびを与えられたのだという。この風習がなくなった後、萬屋万七が江戸からその石材の払い下げを受け、石材として使ったのがこの石だと伝えられる。石には天明八年四月と刻まれているため、天明の石と呼ばれるようになった。
原典より
弁天池の所にある石を人呼んで天明の石という。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。