唐櫃に閉じ込められたヤマハハ
どんな伝承か
昔々ある所にトトとガガがあり、娘を一人持っていた。娘を置いて町へ行くとて、誰が来ても戸を開けるなと戒め、鍵を掛けて出た。真昼間に戸を叩いて開けろと呼ぶ者があり、開けねば蹴破ると嚇すので是非なく開けると、入って来たのはヤマハハであった。飯を炊いて食わせよというので支度をし、その間に家を逃げ出した。追ってくるヤマハハから、柴刈りの翁の柴の中、萱刈りの翁の萱の中と次々に隠れて逃れ、沼の岸の大木に登った。ヤマハハは水に映る影を見て沼に飛び込む。その隙に走り出て笹小屋の女に石の唐櫃へ隠してもらい、女はヤマハハを木の唐櫃に寝かせて鍵を下ろし、焼いた錐で湯を注ぎ込み、ついに殺して二人とも親の家に帰った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。