盗賊も持ち去れなかった美女木の水鐘
どんな伝承か
戸田市下笹目の八幡社に伝わる無銘の銅鐘は鎌倉時代の作とされる。この鐘は最勝寺の池、鐘ヶ渕とも最勝寺釜とも呼ぶ場所から現れたと伝えられ、竜宮から献じられたともいう。享和のころ、数十人の盗賊が押し入って鐘を持ち出したが、鐘は大岩のように重くなって動かず、火で溶かして割ろうとしてもなお重くなるばかりで、盗賊は早戸の原に捨てて逃げた。美女木八幡の別当円通寺の僧が破片を杖に掛けて持ち帰り合わせておくと、いつしか継ぎ目を残して元どおりになった。撞くと大水が出るので水鐘とも呼ばれ、氏子は決して撞かない。浦和の大久保では、この鐘はもと領家の地蔵院のもので、うなりながら川を泳いで美女木に現れたと語る。
原典より
八幡社拝殿にある無銘の銅鐘は、鎌倉時代の優秀作で、県指定文化財。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。