蓼科山の人穴から地下の国を巡った甲賀三郎
どんな伝承か
『神道集』に載る諏訪大社の縁起で、洞窟にひどくこだわった話である。甲賀権守諏胤の三男三郎諏方は、伊吹山の巻狩りの折に妻の春日姫を天狗にさらわれた。国じゅうの山を捜した末、蓼科山の人穴から藤づるを伝って地の底へ下り、好湛国という地下の国で姫を見つける。ところが姫を先に地上へ帰したあと、妬んだ兄の次郎に藤づるを切られて戻れなくなった。三郎は人穴から人穴へと七十三の穴と七十二の国を抜け、たどり着いた国で姫をめとって三年を過ごしたのち、浅間嶽の人穴から地上へ出たが、その姿は大蛇であった。神々の助けで元に戻り、のちに姫とともに諏訪明神として祀られたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
異界巡礼(小松和彦)
『異界巡礼』は、小松和彦が著した民俗学の論集である。狐が人に化ける方法と如意宝珠、蓮如絵伝の異人、鬼退治譚と怨霊、家の盛衰をめぐる民話、夢信仰、巫女と陰陽道、洞窟や龍宮の他界観、人を神に祀る信仰、神隠しなどを、昔話・説話・絵巻・お伽草子と高知県物部村などでの調査をもとに論じる。論考と随想を部に分けて並べ、「民俗のランドスケープ」の部には妖怪、凧上げ、祓い、霜月祭り、呪い人形をめぐる小文を収める。