橋から落ちても鎌を放さなかった友
どんな伝承か
熊本県上益城郡の五十代の杣頭が語った話。今年のメーデーの前の晩、語り手は友人と森林鉄道に乗って砥用の町へ出た。友人は町の土産に魚と鎌を買い、手に下げていた。帰りは暗く雨も降っていたが、線路に沿って歩いていると、ある橋の上で友人が足を滑らせて落ち、崖の小枝に引っかかった。上から見ていた語り手は、鎌を持っていては危ないと思い、捨てろと叫んだ。ところが途中でかろうじて止まっている友人は、河童が自分の魚を欲しがっているのだから、この鎌は放せないと答えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。