下駄の歯に詰まるアシマガリ
どんな伝承か
昭和三年頃、香川県綾歌郡で坂口という若者が夏祭りのチョンカラ(浪曲)を聞きに出かけた。十一時頃に終わって大勢が帰ったあと、夜道が怖いので一人で胸を張り、歯の厚い下駄でのしのしと帰っていった。すると急に、下駄の歯の下に何かが詰まったようになって倒れそうになる。脱いで調べても何もないのに、何度も同じことが起きるので、腰を下ろして下駄を一間ほど放り出した。すると歯の間から子猫ほどの生き物がちょろちょろと出てきた。近所の人は、それはアシマガリという狸だと言ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。