モリエの足を引っぱる狸
どんな伝承か
語り手の母は柿の久保から来ていた。母の里の祖父は太夫でどこかへ祈禱に出ており、祖母がモリエという女の子を連れて留守を守っていた。夜中に何かが来て裏の壁をガリガリと掻き、朝見ると掻き破られていた。またある日の暮れ、モリエが上がろうとすると何かが足を引いた。祖母が家の内へ引き入れようとすると床の掛け軸がバタバタと揺れ、魔物は足を離した。祖母は茶瓶の蓋と杓子を持ち「山の者は山へ住め、川の者は川へ住め」と唱えて追い払った。オキノタニにいた狸のしわざだろうといい、明治の初め頃にはまだ狸が出て悪さをしたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。