月と同じ側に立った自分の影
どんな伝承か
終戦後、飼っていた狸を飼いきれずに放した時代のこと。結婚式の祝儀に呼ばれ、夜の一二時過ぎまでごちそうになった帰り、包みを背負わされて舅の家を出た。包みを背負って狸に化かされ、明日の朝おそくに家へ届くようでは笑われる、などと冗談を言い合っての道中だった。照内のあたりを通り、学校の西の通路を南へ向かって歩いていると、月は前にあるのに、自分の影が前になって先に立って歩く。いよいよ狸に取り憑かれたかと思い、慎重にたばこへ火をつけて落ち着き、無事に家へたどりついた。月がこちらにあるのに影が同じ側にできたことは、今もって解けないという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。