死者が迎えに来る餓えの島
どんな伝承か
ガダルカナル島では、死ぬときに天皇陛下万歳などと言う者はいなかったという。食べる物がなく自然に力が落ちて立てなくなり、まだ死なないうちから顔にたかった蠅の蛆がぽろぽろとこぼれ落ちる。あちらにもこちらにも、そうして寝ているのだという。ところが今わの際になると、腐りかけたような体がどんな力でか、むっくりと立ち上がり、「中隊長どのー、ただ今内地から姉が迎えに参りましたー、帰らしてください」と叫ぶ。中隊長が「うん、帰れ、帰れ」と言うと、ぱたりと倒れてそれで終わりだった。迎えに来る姉は生きている人ではなく、亡くなった母や姉の霊が必ず迎えに来るのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 軍隊』を小話単位で全712話収録。徴兵・新兵・上官・戦地・戦争の残虐・敗戦・収容所・軍隊の怪談など、軍隊と戦争にまつわる兵士たちの現代民話を全国(一部は戦地・海外)から採集し話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明189話・市区町村判明76話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。