硫黄島から別れに来た軍服の夫
どんな伝承か
死の知らせは本当にあるものだという。前の旦那が硫黄島で玉砕したときにも来た。昔は川で顔を洗ったので、その日も東側の戸をあげて外に出ようとすると、暗がりに軍服を着たあの人が立っていた。帰って来たのかと思って道に出ると、「別れさ来た」と言ってスーッと消えた。驚いて追いかけたが誰もいなかった。戦死は三月十五日から十七日の間だろうと思っていたが、後に届いた公報の日付は十七日で、軍服姿で別れに来たのは十七日の朝方であった。二日前の十五日の夜にも、うつらうつらしていると軍服は着ていないあの人が体の上に上がってきて、背筋が冷たくなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。