山門から太子堂へ流れる話し声
どんな伝承か
恐山のお山守りから聞いた話。恐山に怨霊が出るとか幽霊が出るとかいうことは、あまり人には言うなと寺から言われているという。それでもやはり出るのが本当だ、とお山守りは語った。五、六年前に交通事故で人事不省になったとき、大男がいて「来るな来るな戻れ戻れ」と大声で怒鳴った。わかったと言おうとしても声が出ず、気がついたら病院にいたという。また、はっと見ると急に何かが見え、上と下から玉のようになって消えていく。話し声もして、決まって山門から真正面へ向かい、戻ってきて寺の前で何か喋り、塔婆堂から太子堂のほうへ遠ざかっていく。子供の声も年寄りの声も聞こえるが、何を喋っているかは聞き取れないという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。