花畑の向こうの母と臨終の呼び声
どんな伝承か
利根郡利根村での昭和十一年の話。話者の母は亡くなる前、十三日ほど何も食べられなくなり、一週間ほど前には意識不明となって親戚中が集まった。皆で「おっかあ」「おきんさん」「姉さん」と耳もとで呼ぶと、母はふっと息を吹き返し、祖母が好んで着ていた細かな柄の着物姿で花畑の向こうにおり、「まだ来るところじゃないよ」と言われた、皆に呼ばれて目が覚めたと話した。亡くなる日には、いつも呼ぶ父ではなく「おっかあ」とばかり呼んでいたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。