枕元で旦那と頼んだ丹前の病人
どんな伝承か
上野勇が「上毛民俗」に報告した沼田市の話で、ある人の父の体験。昭和十年ごろ、母が便所に起きた物音で父が目を覚まし、時計を見ると三時だった。寝返りを打つと枕元で「旦那」と呼ぶ声がする。見ると、須賀神社の入口に住む千木良一二の父か祖父か、とにかくその家の老人が、黒い襟のついた丹前を着て座っており、「旦那、お願いします」と言うなり見えなくなった。翌朝母に話すと、きっと亡くなったのだと千木良家を訪ねたが、病気で寝ているところだった。病人の着ていたものを聞くと、夜に見た丹前と同じだったという。
原典より
福島県相馬市向町の正西寺は、編者の生家の菩提寺でもあるが、岩崎敏夫博士と、この寺の八幡義孝住職は相馬中学の同級生で編者の先輩にも当たる人。—— 日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。