迎えの支度に立ち働く亡き娘
どんな伝承か
昭和五十年頃、神奈川県川崎市木月の報告者の母が、重い腎臓炎で入院する前日の話である。家事が気になる母は、家の者が留守の間に自分の身の回りの物を洗濯機で洗っていたが、本当はそんなことのできる体ではなかった。すると玄関から仏間にかけて、ざわざわと騒がしい気配がする。母は洗濯機の前にぼんやり座り込み、仏様が自分を迎える支度に忙しくしているのだと心から思った。その先頭に立って働いていたのは、昭和二十四年に十八歳で亡くなった娘、つまり報告者の妹だったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。