金華山の軍歌演習と間に合わなかった面会
どんな伝承か
昭和十八年八月十三日、丙種合格の私に召集令状が届いた。入隊当日、羽織袴の町長をはじめ近所や在郷軍人会、婦人会、青年団が駅前に押し寄せ、川上村の粥川益一氏とともに岐阜連隊へ出発した。初年兵六十名のうち三十名は北満へ、残り三十名とともに私は中支の孝感の六十八連隊へ配属が決まり、出発の九月二日まで毎日銃も持たず金華山に駆け登って軍歌演習に明け暮れた。面会は長良川堤防上の道路で行われ、戦友の日比野芳一が差し出してくれたのり巻きずしを、涙とともに呑み込んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。