夜十一時に届いた補充兵の召集令状
どんな伝承か
昭和十八年十一月、高知県高岡郡の日下村(現日高村)で、増産に追われ農作業に忙しかった頃の話。三十三歳で子供四人と両親妻を抱える補充兵の森辰巳のもとに、十一月三日の晩十一時頃、思いがけず召集令状が届いた。狼狽したが、日下村から出征する四名のうち一番年上だったため、村長や校長らの見送りを受け、一同を代表して挨拶をした。子供や両親をよろしくと頼み、泣き顔もできず汽車に乗った。他の三人とは善通寺市で別れ、本人一人が歩兵隊へ入隊したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。