鍼を打たれた鬼古賀の古狸
どんな伝承か
明治の初めごろ、旅の鍼打ちが大川市鬼古賀のお宮に泊まった。鍼の手入れにと太い鍼を磨き、「いっぽん」と声をあげて床板に突き立てると、宮が地震のように揺れた。面白がって二本、三本と突き立てるたびに宮が揺れ、十本すべて刺すと宮はどさりと倒れて消えた。見れば古狸が金玉に鍼を十本打ち込まれて苦しみ死にかけていた。狸が金玉を広げて宮に化け、入り込む者を食っていたのだ。鬼古賀には狐狸が多く、幾人も食い殺されたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。