畳に刺した針と狸の八畳敷
どんな伝承か
浜松市の山道を、夜がとっぷり暮れた中で宿を探していた商人が、一軒の灯を見つけて戸を叩くと、老人が一人で迎え入れてくれた。寝る前に着物のほころびを繕おうと針と糸を借り、暗い行灯のもとで針を運んでいたところ、ふとした拍子に針山ではなく畳に針を刺してしまった。とたんに悲鳴が上がってあたりは真っ暗になり、家も消えて商人は草原に一人取り残されていた。狸に化かされ、その巨体の上に座らされていたのだと悟ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。